▶️横領事件から学ぶ、経営における「仕組み」と「信頼」

先日、知り合いの経営者と定期的に行なっている情報交換の場で、耳を疑うような生々しい経験談を聞くことができました。

話の内容は、自身の運営する飲食店で売上金の横領事件が発生し、現在、刑事告訴の準備を進めているというものです。

被害額はおよそ150万円。

犯人は、店側が信頼して店舗運営を任せていた「店長(社員)」でした。

今回の事件は、売上金の横領だけに留まらず、派遣サービスを利用した詐欺や、アルバイトの賃金を騙し取るなど多岐にわたっていました。

横領の手口はこうです。

お客様から預かった現金の売上金を、「その日のアルバイトの仮払金として支払った」という嘘の報告を上げ、実際には本部へ入金せずに自身のものとして懐に入れていました。

本来、預かった売上金から仮払金を支払うような運用ルールはありません。

しかし、本部へ上がってきた精算書に多額の仮払金が計上されていることに疑問を感じた経営者が調査を行ったことで、不正が発覚しました。

あまりにも稚拙だったのは、その後の店長の言い訳です。

「売上を上げたいと思い、自分のアカウントで架空の注文をした。
クレジット決済にすると当然自分が支払うことになるため払えない。
だから代引き決済にして、本部に入金予定の現金売上を消すことでバレずに済むと思った」

「架空の注文だから料理は作っていないし届けてもいない。
お客様からもお金を預かっていないから、それを自分のものにしたわけではない。
横領ではないし、自分のアカウントの注文履歴を追えば証明できる。あくまで数字を消したに過ぎない」

「売上だけが上がって食材は減っていないのだから、原価率を計算すれば分かる」

このような言い訳に終始し、まともな話し合いにならなかったそうです。

当然、証明など出来るはずもありません。

さらに悪質なことに、派遣サービスやアルバイトを巻き込んだ詐欺も行っていました。

  • 派遣サービス詐欺: 知人に頼んで単発バイトの枠に応募してもらい、QRコードを渡して現場に来させずチェックイン・アウトだけを行わせる。

    給与が口座に入金されたら、手数料を引いた残りを自分の口座に転送させる。
  • 給与の詐欺: 知人に頼んで銀行口座の名義を借り、架空の雇用を偽装。出勤の実態がないにもかかわらず、勤怠サービスに店長自らが出退勤を入力して虚偽の出勤簿を偽造し、給与を搾取していた。
  • アルバイトからの詐取: 高校生のアルバイトに対しても、言葉巧みに理由をつけて給与を騙し取っていた。

この体験談を聞いて強く思うのは、被害に遭われた経営者側の脇が甘かったという側面が事実であったとしても、

「だから人を信用するな」という理由には決してならないということです。

これから出会う人々が、そんな輩ばかりであるはずがありません。

世の中は決して捨てたものではありません。

責任感に溢れ、真面目で、心から尊敬できる人たちは必ずいます。

だからこそ、不正や犯罪をしっかりと抑止するための「仕組み」を社内に構築していくことは大前提としつつも、

「人を信じる」という経営の軸足はブラさずに、これからも人と接していきたい。

そう強く感じさせられる出来事でした。

尾崎